長崎外の幕末・明治期古写真考 目録番号:4108 崖からみた横浜居留地
HP「長崎大学附属図書館 幕末・明治期日本古写真メタデータ・データベース」などに収録している長崎の古写真について、撮影場所などタイトルや説明文に疑問があるものを、現地へ出かけて調査するようにしている。順不同。長崎以外の気付いた作品も取り上げる。
目録番号:4108 崖からみた横浜居留地
〔画像解説〕 超高精細画像 和文タイトル: 山手から見た山下居留地(2)
右手前の空き地は元フランス海軍物置所で、明治29年(1896)ここにフランス領事館ができる。現在はフランス山公園の一部となっている。左手は明治12年(1879)創業の機械製氷会社で、当初はジャパン・アイス・カンパニーという名前だった。、明治14年(1881)に競売に付され、横浜アイス・ワークスと名称を変えるとともに、オランダ人ストルネブリンクの経営となった。
堀川の向こうが山下居留地になる。画面中央には明治20年(1887)に鉄橋化された谷戸橋が見えている。その向こうがグランド・ホテル旧館(居留地20番)で、大きな煙突は自家発電所のものであろう。そのさらに向こうの三角屋根の建物が、明治23年(1890)にフランス人建築家サルダ(Sarda,Paul)の設計で増築された新館(18・19番)。橋の左手の寺院のような建物は旧ヘボン
(Hepburn,James Curtis)邸。
目録番号:4660 山手谷戸坂からのグランドホテル
〔画像解説〕
中央の建物はグランド・ホテル旧館。左奥にはサルダ(P.Sarda)設計の新館(明治20年竣工)が見える。旧館左の大きな和風屋根は旧ヘボン邸。谷戸橋の手前に広がる敷地には、のちに(同29年)同じくサルダの設計によりフランス領事館が竣工する。
目録番号: 101 グランドホテル全景
〔画像解説〕
英語で「グランドホテルの風景、横浜」とある。横浜バンドの東端、20番のグランドホテルの全景を元町側から撮影したものである。右端の大きな建物木骨石貼のグランドホテル旧館で、明治3年開業された。
目録番号:4910 山手より港を望む(2)
〔画像解説〕
谷戸坂上からの景。正面に和風屋根のヘボン邸が見える。左手に谷戸坂沿いの家並み。右手の茂みはフランス山(フランス軍が駐屯していたのでこう呼ばれる)。裏手には洗濯屋の店が見えるが、英国連隊の洗濯物を一手に引き受けていたと言われる脇沢金次郎の店であろう。
目録番号: 105 キャンプ・ヒル
〔画像解説〕
英語で「横浜のキャンプの丘」とキャプションが印字されている。これは、山手の外国人居留地の一部であり、幕末・明治初期に英仏軍が駐屯していたことから、「キャンプヒル」と呼ばれた。
■ 確認結果
目録番号:4108「崖からみた横浜居留地」(超高精細画像タイトル「山手から見た山下居留地(2)」)、目録番号:4660「山手谷戸坂からのグランドホテル」、目録番号: 101「グランドホテル全景」、目録番号:4910「山手より港を望む(2)」は、ほぼ同じ場所から撮影され、いずれも正面に「ヘボン邸」や「谷戸橋」などが写っている。
最後の目録番号: 105「キャンプ・ヒル」は、逆に「ヘボン邸」あたりから、山手「キャンプ・ヒル」を撮影した作品と思われる。
したがって、前4作品の撮影場所は、「谷戸坂上」には違いないが、「崖」とか「山手」からとしないで、「キャンプ・ヒル」からとした方が具体的と思われる。