「ふるさと長崎市」の古写真考 P.63 グラバー園(昭和62年)
長崎市制施行120周年記念写真集「ふるさと長崎市」(長野県松本市(株)郷土出版社2008年12月刊)に収録している長崎の古写真について、撮影場所などタイトルや説明文に疑問があるものを、現地へ出かけて調査するようにしている。
確認が済んだものをその都度、最新の写真の状況を添えて報告したい。気の向くままの調査のため、掲載順は不同である。
懐かしき風景・街並み P.63 グラバー園(昭和62年)
〔写真説明〕
高台からウォーカー邸(写真左の建物)と自由亭(右の建物)を望む。ウォーカー邸は明治の中頃、大浦天主堂の隣に建てられ、イギリス人ロバート・ウォーカー・ジュニアが暮した。この家は西洋風の円形のベランダや、屋根から突き出した日本風の庇など和洋折衷の洋館である。
自由亭は、江戸時代の終わり頃出島のオランダ人のもとで修行したという草野丈吉により、日本で初めて開かれた西洋料理のレストラン。自由亭廃業の後、検事正官舎として使われていたが、昭和49年グラバー園に移築復元された。(撮影:松尾○○氏)
■ 確認結果
高台とは「長崎グラバー園」の上の山、鍋冠山(標高169.2m)山頂展望台からグラバー園内をズーム撮影している。
写真左の建物は「旧ウォーカー邸」だが、右の建物は「旧自由亭」でなく、建物案内図のとおり、遊歩道対面にある「旧長崎地方裁判所長官舎」なのである。
鍋冠山から撮影しているので、拡大写真で言うと「旧ウォーカー邸」の左上(実際は下の方)木立の中に、白い煙突の先端部分が写っているのが「旧自由亭」となる。
グラバー園公式HPによる「旧長崎地方裁判所長官舎」の説明は次のとおり。
明治16年頃、長崎市の上(うわ)町に建てられた長崎地方裁判所の官舎。官舎が洋式建築を取り入れているのはとても興味深く、当時、西洋の家が近代化の象徴だったことを伺わせます。内部は日本人の設計によるもので、暖炉はなく、板張りの洋間と畳敷きの居間があります。原爆で数多くの建物が失われたにもかかわらず、居留地の外側に建てられた洋風の官庁建築として唯一残る貴重なものです。
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