野母権現山のクチナシと社叢 長崎市野母町
長崎半島最南端の野母権現山。標高198m。大海原が広がる展望台と椿公園は有名。展望台手前に日山神社がある。
野母崎町「野母崎町郷土誌」昭和48年刊35頁に、外山三郎氏が町にある「巨樹」を記しており、次のとおり「権現山のクチナシ」を紹介していた。
○権現山のクチナシ
権現山の日吉(日山が正)神社の社叢中に1本のクチナシがある。10年前の観察であるが今もあるであろう。地上60cmの幹囲が110cm、その直上が、まわり80cmずつの二大幹枝に分かれ、そのうえは、それぞれ数本の枝に分かれている。高さはおよそ8cm、おそらく日本一のクチナシの巨樹であろう。
書かれていることがよくわからない。高さ「8cm」は誤字で「8m」?だろうか。クチナシは常緑低木。だいたい大木でも3mどまり。日本一の巨樹らしいから、野母権現山の日山神社へ見つけに行った。
1月でもクチナシは、赤黄色の実が残って着けているのがある。何とかわかろうかと出かけたのだが、もう30年以上経過している。木はまったく見あたらなかった。
そこで、「野母崎郷土誌 改訂版」昭和61年刊を念のため調べた。同じ内容の「巨樹」の項はあるが、「権現山のクチナシ」は削除され記されてなかった。枯れて絶えたか。しかし、一度目にかかりたかった謎の巨樹である。
ところで、この日山神社社叢にはまた別の樹種の大木がある。外山三郎氏は同郷土誌の昭和48年版・昭和61年改訂版とも、「森林の植物」の中に次のとおり記されている。
○野母権現山
権現山は権現山地塊の最高峰で高さ198m,山頂には日山社がある。このお宮は戦中戦後、いろいろな事情で荒廃していたが、近年りっぱに社殿ができ復旧した。軍のこしらえた道路もあって頂上まで楽に登れる。山上のながめも美しく、また適当な休み場もあって将来は観光客などが登山を楽しむようになるであろう。最近、公園計画があるというが、自然の荒廃をおそれる。
幸にして神社付近にかなり広い樹叢が残っている。その主な樹木はスタジイ(目通り約2m)・イスノキ(2.5m)・シマクロギ(2.5m)・マサキ・ヤブツバキ・カクレミノ・ホルトノキ・クスドイゲ・ハマクサギ・アオモジなどでかなり大きいものもある。…
場合によっては天然記念物に指定して社叢全体を保護するのが適当とも考えられる。まず町で指定してはどうか。
歳月が経過した。社叢にはかなりの大木がある。倒木も多い。外山氏が記したスタジイなどの木が今どれかわからないから、大きな木を写してきた。社叢全体の中まで入って探してはいない。専門の方が調査してほしい。