スローフード世界大会と「ゆうこう」 川 上 正 徳
土井首地区で出会った小さな蜜柑「ゆうこう」(ゆうこうの実は、優しい香りと筋の山があるのが特徴。発見のきっかけとなった木は土井首にある。別項参照)の縁で、図らずも初のヨーロッパ旅行に行く事になりました。外国旅行は中国へ10回、韓国へも5回ほど旅行をしましたが、欧米旅行は初めてでした。
1昨年、土井首地区で「ゆうこう」の植樹祭、昨年は外海地区でも植樹祭がありました。今年の植樹祭に姉妹都市フランスのボスロール村長一行やスローフード協会の方が参加されました。その後、世界スローフード協会の「味の箱舟」に「ゆうこう」も申請することになりました。そのスローフード協会の世界大会「テッラマードレ2006」が本年10月25日から30日までイタリア トリノ市で開催されるので「ゆうこうコミュニティ」として外海の「フェルムド・外海」の日宇さん一行と参加することになったのです。
長崎県雲仙市の「こぶ高菜」、「えたりの塩辛」2種類がすでに「味の箱舟」に登録され、雲仙市長さん一行が参加されるので、初の渡欧の私も仲間に加えていただきました。
旅行で驚いたのは、成田からフランクフルトまで11時間の飛行機の長旅でした。途中、飛行機の窓から広漠とした自然の厳しい景色を写真に撮ったり、楽しんで見ていたらスチュワーデスから「窓を閉めてください。皆さん休んでしますから」と注意され、私も仮眠しました。飛行中に食事が3度も出されました。
フランクフルトで乗り換えると丁度ヨーロッパアルプスの日没がきれいでした。トリノへ着陸すると拍手が起きました。何だろうと後で尋ねると無事着陸できたから拍手する習慣があるとのことで納得?しました。
宿舎はトリノのオリンピック村でどんな良い部屋かと期待していましたが、テレビ、ラジオ、新聞もなくトイレもシャワーも共同でした。宿舎は4階建てで、エレベーターの表示は1階が“ゼロ”、2階は“2”で“1”はないので始めは戸惑いました。
水道水は飲めないのでミネラルウオーターを買うのですが、だまって買うと炭酸入りで少し酸っぱく、飲んでも喉が渇く始末、「ナチュレ」とか「ノーガス」といわないと自然の水が飲めません。1本0.6ユーロ90円位でした。その代わりというかワインの安いのは一抱えもある瓶なのに4ユーロ600円位でした。勿論高いのもあります。空港にはあった自動販売機が街には一切ありませんでした。夜、ミネラルウォーターが無いと朝まで我慢です。
少し時間を見つけてローマ修道院に在学中のシスターの案内で市内に出ました。電車とバスが同じ会社で同じ切符で乗れました。電気軌道をバスも走ります。乗車券は0.9ユーロで70分乗り放題、バスの中では、お金を一切扱わず、売店で買った切符に消印を自分で印字するだけです。無賃乗車は可能です。 紳士の国なのでしょう。
食事にコーヒー屋に入りました。BARと表示があるのですが、日本のバーでなくバールという喫茶店が沢山あります。バールでは、お金を先払いして領収書で現物を受け取ります。座って食事をすると代金が2倍になりました。地元の人は立ち食いです。
大失敗がありました。10月29日、日曜日から夏時間が終わるのでした。それを知らないで会議に入っても30分も遅れるのはイタリアでは常識と言われていたので、やはりイタリア時間で皆ゆっくりしてるなと思っていたら、1時間早く来ていたのでした。30分後、めずらしく次の会議がきっちり始まりました。帰りは30日14時出発して成田へ翌日の31日16時着きました。
本年1月、スローフード日本の学術委員が現地視察に来られ、外海地区、土井首地区のゆうこうの生育状況、地区の皆さんのゆうこうの利用状況を調べていかれた。来年の世界大会には長崎市から唐人菜とゆうこうが味の箱舟入りを果たし、世界の皆さんへ郷土の果実、野菜の良さを発表できればと願っています。
(注)この稿は研究レポート第3集に収録している。ゆうこう振興策の記事は、長崎新聞2207年3月31日付けの長崎近郊ローカル版に掲載分。