ボードイン・コレクション、 7月10日国登録有形文化財に

イメージ 1

ボードイン・コレクション、7月10日国登録有形文化財に

長崎大学附属図書館(長崎市)が所蔵する、オランダ人医師アントニウス・ボードイン(1820〜85年)が日本で収集した江戸末期〜明治初期の古写真「ボードイン・コレクション」が3月19日、国の登録文化財として文化審議会から答申された。6月くらいに国の登録となる予定だと、前に新聞記事により伝えていた。 https://misakimichi.com/archives/1669

その後、登録はどうなったのだろうと思っていたところ、朝日選書862「龍馬が見た長崎 古写真が語る幕末開港」が、2009年12月朝日出版から発行された。序章11頁の文中に「このボードイン・コレクション528点は、2008年に国の登録有形文化財に指定されました」とある。
「2008年」は、明らかに「2009年」の間違い。

HP「国指定文化財等 データベース」を見ると、次のとおり「主名称:ボードイン収集紙焼付写真」は、2009年7月10日、国の登録有形文化財(美術工芸品)となっていた。
新聞・テレビでその後の登録の報道はあまりなかったようだし、長崎大学・長崎県・長崎市の広報も、HP上では今見かけない。

長崎大学附属図書館が所蔵する「幕末・明治期日本古写真」は、文部省科学調査研究費の補助を受け構築したデータベースである。このような内容で全国に公開されていると、今後も見る人・利用する人に多くの迷惑をかけると思われる。
国の登録有形文化財となったので、大学関係者へさらに一層の研究と整備をお願いしたい。

国指定文化財等   登録有形文化財(美術工芸品)

主名称: ボードイン収集紙焼付写真
登録番号: 5
枝番: 0
登録年月日: 2009.07.10(平成21.07.10)
部門・種別: 歴史資料
ト書:
員数: 528点
時代区分: 江戸〜明治
年代:
検索年代:

解説文: 幕末から明治初頭に日本に滞在し、医学教育に努めたオランダ人医師アントニウス・F・ボードイン(Antonius Franciscus Bauduin 1820-1885)と、貿易会社社員であり、のちに領事を兼任したその弟アルベルト・J・ボードイン(Albertus Johannes Bauduin 1829-1890)が収集した写真である。
アントニウス・F・ボードインは、オランダに生まれ、同国で医学を学び、陸軍医学校の教官を勤めた。既に出島に居留していた末弟のアルベルト・J・ボードインの薦めもあり、文久2年(1862)、ポンペの後任として長崎の養生所で教鞭をとるため来日した。また、その後も大阪仮病院や大阪陸軍病院、大学東校においても教鞭をとり、明治3年(1870)帰国している。
アルベルト・J・ボードインはオランダ貿易会社社員として安政5年(1858)に来日し、のちに駐日オランダ領事も兼任した。明治7年の帰国後、1875年に駐蘭日本公使館書記官となり、1884年には同一等書記官として勲四等旭日章を授与されるなど、長く日本との関係を保っている。
本写真は、彼らが主に日本滞在中に収集・撮影したもので、数枚を除き、銀襴の表紙を施した3冊の和装大判アルバムと、クロス貼りに革背表紙の洋装小判アルバム1冊に貼りこまれている。
これらの写真はコロジオン湿板法により撮影され、主に鶏卵紙に印画されており、和装アルバム3冊は、パノラマ写真や四つ切判の大型写真から、縦15㎝横10㎝程の小型の写真までからなり、洋装アルバムには名刺判大のものが収められている。
3冊の和装アルバムには、開港直後の日本の記録を残したことで著名な写真家ベアト(Felice Beato)の撮影した写真が数多く収められている。ベアトはスタジオを構えた横浜を中心に、鎌倉・江戸・神奈川・大坂・長崎等各地で撮影しており、当該アルバム内の写真にも、これらの地の風景・風俗が記録されている。また、上野彦馬や堀與兵衛、中川信輔など、草創期の日本人写真家の撮影した写真も含まれる。また、これらの和装アルバムには、アントニウス自身が長崎で撮影した写真も認められ、兄が時々風景等を撮影していたことを伝える弟アルベルトの書簡がこれを裏付けている。
なお、和装アルバムに収められた写真、長崎で撮影されたものが最も多く、風景・風俗、ボードイン兄弟や知人の肖像、記念写真等も収められ、居留外国人の生活の一端を伝えている。また、鎌倉事件、生麦事件など攘夷事件の現場や下関戦争の写真、ベアトとスタジオを共同経営した画家ワーグマン(Charles Wirgman)が描いたこれらの事件や戦争のスケッチを複写した写真も収められている。
洋装アルバムは、前半に明治初頭の日本の政府要人の肖像写真であり、後半は洋風建築の官公庁や日本各地の景勝地の写真で構成され、中には複写を重ねたものも含まれる。各写真には被写体名を墨書した小紙片が添えられており、日本人の関与を窺わせる。また、明治11年竣工の陸軍省の写真が含まれており、この洋装アルバムが兄弟の帰国後に成立し、その後に兄弟が入手したものと推測される。
二人の没後、収集された写真は彼らの兄弟である第八子のドミニクス(Dominicus Franciscus Antonius Bauduin)の子孫に伝えられ、そのうち528点が平成19〜20年に長崎大学に譲渡された。長崎大学ではこれらの全てデータベース化して公開するなど、保存・公開の体制を整えている。
本件写真は、幕末・明治初頭の日本の姿と居留外国人の有様とを伝えるまとまった写真コレクションであり、写真史上・文化史上に資料価値が認められる。