「ふるさと」の古写真考 P.183 土井首中学校(平瀬町・昭和33年)

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「ふるさと長崎市」の古写真考 P.183 土井首中学校(平瀬町・昭和33年)

長崎市制施行120周年記念写真集「ふるさと長崎市」(長野県松本市(株)郷土出版社2008年12月刊)に収録している長崎の古写真について、撮影場所などタイトルや説明文に疑問があるものを、現地へ出かけて調査するようにしている。
確認が済んだものをその都度、最新の写真の状況を添えて報告したい。気の向くままの調査のため、掲載順は不同である。

教育の広がり  P.183 土井首中学校(平瀬町・昭和33年)
〔写真説明〕
昭和22年、中学校校舎として川南工業(株)農業試験場を借用したのが始まりで、昭和44年には現校舎へ移転した。寄棟造の木造校舎が印象的である。奥は末石町で3棟のアパートがみえるが、主に造船所の社宅として利用された。アパート手前の空き地は、現在は、造船所の工場となっており往時の面影はない。学校のみならず、この地域の開発の歴史を知る上で大変貴重な一枚である。(提供:長崎市)

■ 確認結果
鶴見台団地内の大通り坂道を下り、右方に平瀬町へと行く。すぐ左の海岸側に移転前の長崎市立土井首中学校があった。現在はNTTグランドとなっている。中学校の校舎がどのような配置で建っていたかわからないため、とりあえず現地へ行った。奥が末石町か、毛井首町も考えられる。古写真は右に船が写っており、海は右側である。そうするとやはり末石町である。

グランドへ行っても、高層アパート「サルヴァトーレ平瀬」や対岸には「FUKUOKA」の大きな工場建物が視界をさえぎる。そのため現在の写真は、NTTグランド横の「サルヴァトーレ平瀬」6階から写した。
対岸の「FUKUOKA」(福岡造船長崎工場)建物の海岸埋め立て線が、古写真のとおりなっているので、やはり末石町のアパートを望み撮影しているのがわかった。

ただし、このアパートは現在の雇用促進住宅末石宿舎や三菱深堀アパートを写したものではない。両方のアパートは昭和43年完成した深堀〜香焼埋め立てのため削り取られた山手に後で建ったものである。
古写真に写っている白いアパート3棟は現在はない。福岡造船前か三菱長崎機工場前のバス通り反対側の駐車場となっていると思われる。最後が毛井首町側を望んだ場合の写真。

■ 余 録
長崎市制施行120周年記念写真集「ふるさと長崎市」関係の古写真考は、これで終わりとしたい。27点を載せた。執筆者が見解をなかなか変えなく、編集・監修が粗雑となっているものが多い。昭和の直近の写真でもこのとおりの状況だった。
近々、長崎大学附属図書館所蔵コレクションは、国の文化財に指定されるという。文化財にふさわしいものとするため、本意でないがあえてブログにより、疑問点を具体的に指摘している。

要は現地確認を確実に行い、文献調査を徹底して、早急に正していただきたい。古写真は、長崎さるく説明板やこのような写真集に利用されている。誤った解説は、利用する側と見る人に迷惑をかけていることに思いをいたすべきではないだろうか。
上野彦馬らも草葉の陰で嘆いているであるまいか。