小ヶ倉水源池の洪水吐トンネル 長崎市上戸町4丁目
長崎市南部の戸町岳の麓、鹿尾川水系鹿尾川にある「小ヶ倉水源池」は、大正15年(1926)完成した。粗石コンクリート重力式ダムで、表面に御影石が張られている重厚な堤体。
完成当時は、日本で堤体が一番高い水道用ダムだった。土木学会の「日本の近代土木遺産〜現存する重要な土木構造物2000選」に選ばれている。
参 照 https://misakimichi.com/archives/1196
ほとんどのダムは堰堤や脇に、洪水の流入に対しダムと貯水池の安全を確保するため、「洪水吐」(こうずいばき)が設けられているが、小ヶ倉水源池は、本来の堰堤とは別のところにも、地形をうまく利用したもう1つの洪水吐トンネルが設けられている。珍しいダムと思われる。
別のところとは、ダム周辺地図のとおり、B地点のダム岸に設けられた洪水吐。尾根下にトンネルや水路を掘って反対側斜面の谷へ水を流す。そうすると湾曲した鹿尾川とまた合流する。もちろん、最初にダムが完成した当時からあったものではない。
昭和57年(1982)7月、未曾有な長崎大水害にダム下周辺の住宅地も見舞われた。治水と新たな水道用水確保のため、下流に昭和62年(1987)「鹿尾ダム」が造られた。
この場所の「洪水吐」は、鹿尾川が大水害に遭った上戸町や新戸町の住宅地を流れるため、ここを避けて直接、鹿尾ダムの上部に流すことによって、きれいな上水道水が鹿尾ダムも得られる。
鹿尾ダムは、長崎県が洪水調整やかんがい用水、水道用水供給を目的として建設した多目的ダム。昭和62年(1987)5月に完成した。
鹿尾ダムにある現地説明板が、「小ヶ倉水源池の洪水吐トンネル」を次のとおり説明していた。
鹿尾川総合開発事業の概要
鹿尾川総合開発事業は、上流にある既設の小ヶ倉ダムに洪水調節容量を確保し、洪水調節を行うため洪水吐トンネルを設置して鹿尾ダムと一帯となって、洪水調節、都市用水の供給及び不特定用水の補給等を目的とするものです。
洪 水 調 節
小ヶ倉ダム地点においては、計画高水流量毎秒110㎥のうち毎秒40㎥の洪水調節を行い、鹿尾ダム地点においては、計画高水流量毎秒270㎥のうち毎秒60㎥の洪水調節を行って、それぞれダム地点下流の水害を防除します。
流水の正常な機能の維持
小ヶ倉ダム及び、鹿尾ダム地点下流の鹿尾川沿岸の維持用水の補給を行う等、流水の正常な機能の維持と増進をはかります。
上水道用水
長崎市に対し、鹿尾ダム地点において上水道用水として1日当たり約7,600㎥の取水を行います。