江上天主堂 五島市奈留町大串
奈留港ターミナルから奈留高校の方へ向い、学校手前から西海岸通りの道へ入る。港から約8kmの大串湾沿いに江上天主堂がある。または港から県道168号線により相ノ浦湾沿いに行き、遠命寺トンネルを抜けると江上天主堂に着く。
長崎県HP「長崎県の文化財」による説明は次のとおり。天主堂内写真は現地説明板から。後ろ2枚は、敷地内で見た桁石橋。
江上天主堂 重要文化財(国指定)
鉄川与助の設計施行による木造天主堂の代表作
よみがな えがみてんしゅどう
指定年月日 平成20年(2008)年6月9日
所在地 五島市奈留町大串1131−2
所有者 カトリック長崎大司教区
年代 大正7年(1918)
奈留島には、江戸時代後期に大村藩領から開拓民が移住したが、そのほとんどは潜伏キリシタンであった。明治6年(1873)にキリスト教禁制の高札が撤廃されると、江上地区では民家を借りてミサを行っていた。その後、明治39年(1906)に現在の江上天主堂のある場所に簡素な木造教会堂を建てたが、この木造教会に関する資料は残されていない。現在の天主堂は、大正7年に鉄川与助(※1)の設計・施行によって建てられ、平成14年2月26日に長崎県指定有形文化財に指定された。世界遺産暫定一覧表に登録されている「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産候補のひとつ。
左右対称のシンプルな外観であるが、内部はリヴ・ヴォールト天井(※2)など、天主堂として本格的な立面構成となっている。柱には手書きで木目模様を施し、さらにステンドグラスの代わりに、透明ガラスに花を描くなどの工夫もみられる。大正から昭和初期にかけて多くの教会が鉄筋コンクリート造へと変遷していく中で、江上天主堂は小規模ながら木造教会堂としての完成形といえる出来を示し、鉄川与助による木造天主堂の代表作である。
我が国における木造天主堂のうち、完成度の高い作品として歴史的価値が高く、鉄川与助の手がけた木造天主堂の代表作としても重要であり、指定基準の「歴史的価値の高いもの及び流派的又は地方的特色において顕著なもの」に該当する。
※1 上五島に生まれ(1879〜1976)、代々の建築業を継ぎ、数多くの教会建築に携わった。 ※2 天井に交差するアーチを渡してつくる曲面の天井のこと。