スローフードの輪  ●ユウコウ 長崎市  読売新聞記事から

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スローフードの輪  受け継ぐ地域「色」  読売新聞記事から

平成20年1月1日付読売新聞の掲載記事。長崎市特産のかんきつ類「ユウコウ」について、次のとおり紹介している。
本ブログへの川上正徳氏寄稿の別項も参照ください。

●ユウコウ 長崎市  万能の実り 庶民と共に

長崎市の北部に位置する外海地区。角力灘に近い高台の木にぶら下がった黄色い果実から、ほのかに甘酸っぱい香りが漂う。市特産のかんきつ類「ユウコウ」。ひっそりと守られてきた果実が今、見直されている。
「生活の必需品。元気の源です」。地元の主婦、日宇スギノさん(60)が声を弾ませる。子供のころ、せきが出ると母親はユウコウを切ってあぶり、温かい搾り汁にして飲ませてくれた。その思い出が鮮明に残る。
直径7㌢、重さ150㌘ほどの果実は、10〜2月が収穫期。青い実が、次第に黄色く色付いてくる。
ユウコウは長崎市と佐賀県の一部でしか確認されていない。「外国人宣教師が伝えたのでは?」との説もあるが、ルーツは謎のままだ。それでも、果汁を飲んだり、焼き魚にかけたりと、いつも庶民のそばにあった。
注目され始めたのは4年前。元長崎市職員の川上正徳さん(64)が偶然、その存在を知り、長崎県果樹試験場などの協力を得て調べてみた。ユズやカボスとは似ては非なる「新種」と分かり、その後、中性脂肪濃度を下げる効果があることも報告された。
家の建て替えや道路建設などで、以前から生えていたユウコウの木は減った。長崎市内には100本余りが残るだけだが、市は活用策を話し合う検討会を作り、苗木の植樹を始めた。昨年4月に亡くなった伊藤一長・前市長も感心を寄せ、川上さんが贈った苗木を大切に育てていたという。
川上さんは今、古本を調べてルーツをたどる研究を続けている。日宇さんは2年前から、果皮を練り込んだパンを焼き、地元の道の駅で売り出した。
ユウコウが縁で交流を始めた2人は「ここにしかないものだからこそ、魅力を伝えたい。私たちにはかけがえのない宝物です」と口をそろえる。          (加地水治)